特集 インフルエンザの疫学的考察と今日の臨床
8.鳥インフルエンザの現状と今後
喜田宏
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1日本学士院会員/北海道大学 特任教授/同大学人獣共通感染症リサーチセンター 統括/世界動物衛生機関(OIE)鳥インフルエンザレファレンスラボラトリー長/世界保健機関(WHO)人獣共通感染症対策共同研究センター長
pp.2457-2462
発行日 2014年10月1日
Published Date 2014/10/1
DOI https://doi.org/10.20837/12014102457
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H5N1,H5N8,H7N7とH7N1高病原性鳥インフルエンザウイルスが世界各地で家禽に感染被害を与えている。鳥インフルエンザ対策の目的は,「感染家禽の早期摘発・淘汰により,被害を家禽に封じ込め,ヒトの健康と食の安全を守る」ことである。H5N1およびH7N9ウイルスがパンデミックを起こすと想定されているが,筆者は,その可能性は低いと考えている。もしパンデミックが起こったとしても,新たなヘマグルチニン(HA)亜型のウイルスは,ヒト集団に免疫がないので,伝播性は高いが,病原性は低い。パンデミック第二波以後,すなわち季節性インフルエンザを起こすウイルスの方がヒトの体内でよく増殖するので,病原性が高い。従って,季節性インフルエンザ対策の確立こそがパンデミックインフルエンザに対する備えの基盤である。