特集 抗インフルエンザ薬物療法 update~最新の診断・治療戦略~
8.鳥インフルエンザとパンデミックインフルエンザ対策の要
喜田宏
1
1北海道大学ユニバーシティプロフェッサー/北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター統括/ 長崎大学感染症共同研究拠点長
pp.2295-2299
発行日 2017年10月1日
Published Date 2017/10/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201710111
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鳥インフルエンザ対策の要は,感染家禽を早期に摘発し,その群を淘汰するとともに,発生農場から周辺へのウイルス伝播を防止するといった衛生対策の強化により,被害を最小限に食い止めることである。
人の“新型”(パンデミックの誤訳)インフルエンザは,毎年の季節性インフルエンザとは別の感染症として対策が執られているが,これは間違いである。パンデミックウイルスは,人々に免疫がないので伝播性は高いが,感染した人における増殖能は高くないので,その病原性は低い。パンデミックウイルスが人々の間で感染伝播を繰り返すうちに,人体で増殖能が高いウイルス,即ち病原性の高いウイルスが選択され,優勢となり,季節性インフルエンザを起こすのである。従って,季節性インフルエンザ対策,特にワクチンの免疫力価の抜本強化こそがパンデミックインフルエンザ対策の要である。