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インフルエンザは人獣共通感染症
鳥インフルエンザとは,家禽のインフルエンザAウイルス感染症である.家禽,家畜,野生鳥獣とヒトのインフルエンザAウイルスの遺伝子は,そのすべてがカモの腸内ウイルスに由来する.すなわち,インフルエンザは典型的な人獣共通感染症であり,水禽,特にカモがインフルエンザウイルスのレゼルボア(reservoir)である.したがって,当面,インフルエンザを根絶することはできない.家禽の感染を早期に摘発,淘汰することにより,被害を最小限にくい止めるとともに,ヒトの健康と食の安全を守ることが,鳥インフルエンザ対策の基本である.グローバルサーベイランスを軸とする先回り戦略によってのみ,鳥とヒトのインフルエンザを克服することができる.
インフルエンザAウイルスは,ヒトを含む哺乳動物と鳥類に広く分布する.なかでも水禽,特にカモからはすべてのヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)亜型(それぞれH1~H15とN1~N9)のウイルスが分離されている.カモは夏にシベリア,カナダやアラスカの北極圏に近い営巣湖沼でインフルエンザウイルスに水系経口感染し,結腸陰窩の上皮細胞で増殖したウイルスを糞便とともに排泄する1).8月中旬に,カモは渡りに飛び立ちはじめ,温帯・亜熱帯地域で越冬する.カモに害を及ぼすことなく受け継がれているウイルスは,カモの渡りの飛翔路に沿って,あるいは越冬地で家禽や家畜に感染,伝播して,病原性を獲得することがある.特に,ウイルスがニワトリ集団に侵入し,数カ月にわたってニワトリからニワトリに感染を繰り返すと,ニワトリに対する病原性を獲得することが経験されている.このような高病原性鳥インフルエンザウイルスのHA亜型は,H5またはH7に限られる.
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