特集 インフルエンザ
鳥インフルエンザ
大槻 公一
1
1京都産業大学工学部
pp.752-757
発行日 2006年10月1日
Published Date 2006/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100652
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鳥インフルエンザとは何か
鳥インフルエンザとは,インフルエンザウイルスが感染することにより引き起こされる家禽類を含む鳥類の疾病の総称である.病勢から本病は2型に大別される.まず,かつて家禽ペストと呼ばれた鶏を含む家禽類に激烈な臨床症状を伴い,非常に高い死亡率をもたらす甚急性の疾病がある.現在では強毒の高病原性鳥インフルエンザと呼称される.家畜伝染病予防法では,法定の家畜伝染病に指定されている.2004年に山口県,大分県,京都府で発生した疾病がこれにあたる.もう一方は,死亡率の低い,臨床症状も軽微な,多彩な病性を示す疾病である.ウイルスに感染しても,鶏は明らかな臨床症状を示さず,不顕性感染に終始する場合も少なくない.本病は家畜伝染病予防法では届出伝染病に指定されている.
1980年頃まで,インフルエンザは,鳥類を除けば人,あるいは豚,馬のような一部の哺乳類のみが感染する疾病であると考えられてきた.しかし現在では,インフルエンザウイルスは様々な種類の哺乳類,たとえばアザラシ等の海獣類,クジラ,あるいはフェレット,ミンク等の北方系の肉食哺乳類などにも,本ウイルスは感染して発病することがわかっている(図1)2).一方,強毒の高病原性鳥インフルエンザの病原体がA型インフルエンザウイルスであることが1955年に判明して以来,鶏以外の外見上健康な各種鳥類が,様々な種類のインフルエンザウイルスを,その体内に保有していることが知られるようになった.鳥類が保有している大部分のインフルエンザウイルスは,鳥類に対して激烈な病原性を示さないこともわかっている.
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