特集 パーソナルゲノム時代における倫理的課題
2.大規模ゲノムコホート研究実施におけるELSI ~偶発的所見,インフォームドコンセント,個別化医療~
戸田聡一郎
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1東北大学 東北メディカル・メガバンク機構/大学院医学系研究科 広報・企画部門
pp.941-943
発行日 2014年3月1日
Published Date 2014/3/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201403061
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近年,わが国においても,大規模ゲノムコホートが展開されつつある。それに伴い惹起されるELSI(Ethical,Legal and Social Issues〔倫理的・法的・社会的問題〕)について,世界に先駆けて整理し,解決の道筋を立てることが急務となっている。それはとりわけ結果の返却に関する問題群であり,特に遺伝情報の解析結果を研究参加者に返す際に発生する。いつ,誰が,どのようにして「研究」結果を参加者に返せば良いのか―。世界的に見ても困難なこの問題への先鞭をつけるため,本稿では研究の土台となるインフォームドコンセントと,比較的新しい問題である偶発的所見との関連を分析する。この作業により,必ずしも研究参加者の自律性だけを偏重するのではない,彼らとの「信頼」関係に基づく新しい相互作用のモデル創出が重要であることが示唆されよう。