連載 リスクマネジメント~院内での薬剤師の活動~(82)
医療現場における薬物相互作用の網羅的な予測と注意喚起の重要性
大野能之
1
,
鈴木洋史
2
,
樋坂章博
3
1東京大学医学部附属病院薬剤部
2東京大学医学部附属病院薬剤部 薬剤部長
3東京大学医学部附属病院薬剤部 22世紀医療センター 薬理動態学教室・特任准教授
pp.727-733
発行日 2013年2月1日
Published Date 2013/2/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201302147
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
薬物相互作用のマネジメントは適切な薬物療法のために不可欠であるが,その実践は容易ではない。膨大な薬剤から顕著な相互作用を引き起こす組み合わせを記憶して,すべての注意喚起を図ることは現実的ではない。また,添付文書では適切に注意喚起できていない相互作用も少なくない。そこで我々は,シトクロムP450(CYP)を介する薬物相互作用について,簡便でありながら多くの薬剤の組み合わせについて血中濃度変化を予測する方法を開発した。これは,各CYP分子種の典型的な阻害薬,あるいは誘導薬と基質薬を併用した一部の臨床試験のクリアランス変化から,各CYP分子種の基質薬のクリアランスへの寄与率(CR),阻害薬の阻害率(IR)あるいは誘導薬によるクリアランスの増加(IC)を算出することによって,多数の薬物相互作用による基質薬の血中濃度-時間曲線下面積(AUC)変化率を網羅的に予測するものである。さらに,この予測方法を基に,薬物相互作用の強さの予測を臨床的なリスク評価の設定に応用するためのフレームワークを構築した。このようなフレームワークは,患者個別の有効かつ安全な薬物療法を支援するための強力なツールになると考える。