Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「英雄の証明」—「感動」を喚起する素材としての吃音少年とその父の物語
二通 諭
1,2
1札幌学院大学
2札幌大谷大学
pp.1133
発行日 2023年10月10日
Published Date 2023/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202960
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障害者映画は,1990年代以降,当事者や周囲の人々の「内面形成もの」として進化し,障害への肯定的な眼差しを培ってきた.その一方,感動を過剰に喚起させる「感動ポルノ」の素材としての「障害」に目を付ける輩も出てきた.吃音少年が重要な役割を果たす「英雄の証明」(監督/アスガー・ファルハディ)は,周囲にそんな人物を配している.
イランの古都シラーズで看板職人として働いていたラヒム(アミル・ジャディディ)は,3年前に借金を返済できなかったことから服役中の身である.貸主は,別れた妻の兄バーラム.ラヒムは,出所実現を目指し,塀の外に出ることが許される2日間の休暇中に借金の返済へと動く.ラヒムには,婚約者のファルコンデが金貨17枚入りのバッグを拾っており,返済の見通しがあった.とはいえ,持ち込んだ貴金属店の鑑定では,返済額の半分の価値.ラヒムをペテン師呼ばわりするバーラムは,全額返済が訴え取り下げの条件とするスタンスを崩さず,金貨は行き場を失う.
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