連載 薬理学―見方をかえたら・4
薬物相互作用について
堀 誠治
1
1東京慈恵会医科大学薬理学講座第1
pp.691
発行日 1998年8月25日
Published Date 1998/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663901903
- 有料閲覧
- 文献概要
今回は,薬物相互作用について述べることとする.今日,薬物相互作用(いわゆる薬の飲み合わせ)による有害反応が注目されている.しかし,薬物相互作用は有害反応だけではなく,逆に薬物効果を減弱させることもある.薬物相互作用の生じる機序には,薬物の生体内での動態に影響を与える場合と,薬物の体内動態には変化を与えないが,その感受性に変化を与える場合とがある.
まず,薬物の体内動態に変化が生じる場合について述べる.薬物が併用された際には,それぞれの薬物が自分のとるべき運命(代謝,排泄など)を主張する.代謝に同じ酵素を用いる薬物が同時に2種以上体内に存在する場合,それぞれの薬物が1つの酵素に向かっていく.その結果,酵素による薬物の分解速度は単独のときにくらべ,遅くなる.そのため,薬物は体内に蓄積し,副作用を発現する.これは個々の薬物が,生体内における自分の運命を主張した結果といえよう.それぞれは通常の投与量であっても,体内の薬物濃度が上昇し,有害作用が出現する可能性がある.
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.