特集 最新の免疫学 ~自然免疫・獲得免疫~
3.腸管免疫系と腸内細菌の相互作用
大野博司
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1理化学研究所 横浜研究所 免疫・アレルギー科学総合研究センター(RCAI)免疫系構築研究チーム・チームリーダー横浜市立大学大学院生命ナノシステム科学研究科 生体超分子システム科学専攻 免疫生物学研究室・客員教授
pp.667-672
発行日 2013年2月1日
Published Date 2013/2/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201302087
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ヒトをはじめとする動物の腸管は,常に膨大な数の食物タンパク質や基本的に非病原性と考えられる腸内共生細菌叢(腸内フローラ),さらには飲食物とともに侵入する病原微生物に曝されている。腸内フローラは,宿主免疫系の正常な発達に必要であると考えられてきたが,最近ある種の腸内フローラの構成菌が特定のT細胞サブセットの発達に必要なことが明らかにされた。一方,腸管免疫系は,食物タンパク質や腸内フローラなどの無害な異物抗原には反応せず病原微生物にのみ免疫応答を起こすわけではなく,腸内フローラに対してもIgA抗体を産生して腸内フローラを一定範囲内に抑えている。腸管免疫系による腸内細菌抗原の認識には,特殊な腸管上皮M 細胞による細菌の腸管内腔からの取り込みと腸管免疫系への受け渡しが必要である。M 細胞上に存在する細菌取り込み受容体も同定されつつある。