特集 腸内細菌をめぐって
Ⅰ.腸内細菌をめぐる基礎研究のブレイクスルー(2)腸内細菌と腸管免疫
大野 博司
1
1理化学研究所統合生命医科学研究センター(IMS)粘膜システム研究グループ
キーワード:
腸内細菌叢
,
濾胞関連上皮層
,
M 細胞
,
Spi-B
,
IL-22BP
,
Th 細胞
Keyword:
腸内細菌叢
,
濾胞関連上皮層
,
M 細胞
,
Spi-B
,
IL-22BP
,
Th 細胞
pp.293-300
発行日 2017年7月20日
Published Date 2017/7/20
DOI https://doi.org/10.19020/INT.0000000072
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ヒトを含む動物の腸内には膨大な数の腸内細菌叢が共生しているが,腸管は腸内細菌叢を無条件に受け入れているわけではなく,これらに対するIgA を産生分泌して抑え込もうとしている.そのために,パイエル板などのリンパ濾胞を覆うfollicle-associated epithelium(FAE)と呼ばれる上皮領域にはM 細胞と呼ばれる細菌の取り込みに特化した上皮細胞が分化し,GP2 やプリオンタンパク質といった細菌取り込み受容体を発現して細菌抗原を取り込み,細菌に対する免疫応答の誘導に働く.M 細胞の分化には転写因子Spi-B の発現が必要である.また,M 細胞が効率よく細菌抗原を取り込めるように,パイエル板の一部の樹状細胞サブセットはIL-22BP というIL-22 結合タンパク質を分泌してIL-22をキャプチャーし,FAE にIL-22 刺激が入らないようにすることで,FAE による粘液や抗菌ペプチドの産生を抑えている.さらに,腸内細菌は種々のTh 細胞サブセットの分化を制御しており,逆にこれらのTh 細胞の分化やそれを介するIgA の多様性の獲得が腸内細菌叢の多様性を保ったり,Th17 やTreg の分化により免疫恒常性の維持に働く.
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