高齢腎不全患者のバスキュラーアクセスを科学する
高齢者の全身状態とシャント
濱之上 哲
1
,
宮田 昭
1熊本赤十字病院 腎センター
キーワード:
虚血
,
血液循環
,
血液透析
,
血管抵抗
,
交感神経系
,
静脈圧
,
心拍出量
,
腎不全-慢性
,
糖尿病性腎症
,
肺高血圧症
,
虚弱高齢者
,
心拍出量-高性
,
高齢者評価
,
カテーテル感染
,
ブラッドアクセス
,
静脈高血圧
,
スチール症候群
,
老年症候群
Keyword:
Blood Circulation
,
Cardiac Output
,
Diabetic Nephropathies
,
Kidney Failure, Chronic
,
Ischemia
,
Hypertension, Pulmonary
,
Renal Dialysis
,
Sympathetic Nervous System
,
Venous Pressure
,
Geriatric Assessment
,
Vascular Resistance
,
Frail Elderly
,
Cardiac Output, High
,
Catheter-Related Infections
pp.831-852
発行日 2016年6月20日
Published Date 2016/6/20
DOI https://doi.org/10.19020/J01864.2016273587
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<Point>内シャント設置に伴う影響は、おもに心血管系に対する容量負荷として現れるので、術前に動脈・静脈の評価とともに心機能の評価が必要である。とりわけ高齢者の導入例においては、バスキュラーアクセスの選択は慎重に判断すべきである。内シャントは長期間の使用を前提にしている。このため、手術を担当する医師は、その内シャントが長期的にどのような経過をたどるか、老化していく患者に対してどのような影響を及ぼすか想定しつつ、手術の計画を立てる必要がある。穿刺しやすく、脱血・返血に問題のない内シャントほど、循環動態に高流量心負荷を及ぼしている可能性がある。医療者は日々の透析において、この視点を忘れず、患者の訴えや日常活動の程度、心エコーなどの適切な経過観察を行い、心不全症状が顕性となった場合には適切な対策をとる必要がある。内シャントは非生理的な血流を人為的に設置することにより、非常に違和感のある環境を血液透析とともに高齢者に与える。多くの場合、高齢透析患者の日常活動能力は低下し、認知症患者の場合には、その進行またはせん妄の悪化をきたす場合がある。われわれは高齢透析患者に対して、臓器別の視点のみならず、全人的視座から見た医療を提供する姿勢をもつ必要がある。
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