発行日 2013年12月10日
Published Date 2013/12/10
DOI https://doi.org/10.19020/J01864.2014104930
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70歳代後半男。30年以上前に重症高血圧を指摘されたが放置していた。今回、左半身の脱力が認められ、あわせて動悸や呼吸苦が出現し受診となった。所見では腎機能障害、proBNPとCRPの上昇ほか、軽度の筋融解所見が認められた。また、胸部X線では軽度の肺うっ血像と両側胸水がみられ、心エコーではびまん性心拍出能低下が確認され、心電図では心房細動が認められた。対処としてカルシウム拮抗薬の点滴静注が行われたが、循環動態は安定したものの、尿量はフロセミド静注でも増えなかった。更に右下腹部の疼痛も生じたため、CTを行なったところ、左腎の萎縮や両側腎盂結石、大動脈狭小化、回盲部の多発憩室が認められた。一方、血液検査ではクレアチニン、CK、D-dimer、CRPならびに白血球の上昇も認められ、MRAでは腹部大動脈の上腸間膜動脈以下での閉塞、T2強調像での同部位大動脈のflow voidの消失、左腎萎縮、両腎の拡散低下が認められた。以上より、本症例は腹部大動脈血栓による閉塞と腎梗塞が示唆され、血液透析を開始した。その結果、3次元CTでは下腸間膜動脈は根部で閉塞しているが結腸直腸間膜の動脈は造影され、両側腸骨動脈は腹壁の側副血行路で血流は保たれていた。内科的、外科的インターベンションの適応から近医の血管外科へ転院となったが、上腸間膜動脈の閉塞はなく、保存的経過観察とし維持透析が行われている。
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