特集 ここまで進んだ肝硬変診療
4.肝硬変合併症の治療(1)肝性浮腫に対する最新の治療―肝腎相関も含めて
西山 夏子
1
,
松本 俊彦
1
,
高見 太郎
1
1山口大学大学院医学系研究科消化器内科学
キーワード:
腹水
,
利尿薬
,
肝腎相関
Keyword:
腹水
,
利尿薬
,
肝腎相関
pp.1283-1292
発行日 2023年8月20日
Published Date 2023/8/20
DOI https://doi.org/10.19020/CG.0000002779
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肝性浮腫は,肝硬変に起因する低アルブミン血症による血漿膠質浸透圧の低下,門脈圧亢進による腸間膜静脈やリンパのうっ滞,有効循環血漿量減少による二次性高アルドステロン血症が複雑に関与して生じる.肝性浮腫に対する治療として,まずは塩分制限や分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤投与などの栄養療法が基本となるが,コントロール不良であれば,利尿薬による治療を開始する.利尿薬はスピロノラクトンを第一選択とする.またループ利尿薬(フロセミド)は優れた利尿効果を有するものの,低ナトリウム血症や腎機能低下の副作用があるため,治療効果不良の場合は増量することなく入院のうえトルバプタンを導入する.このトルバプタンは,ナトリウムの排泄は伴わず水のみを排泄する水利尿薬であり,腎機能への影響が少なく,低アルブミン血症でも利尿効果が期待できる.トルバプタン不耐および不応の場合は腹水穿刺排液を行うことになるが,5 l以上の大量腹水排液時には症状詳記に記載のうえアルブミン製剤(8 g/l)を併用投与し,循環不全や肝腎症候群の発現を抑制することが重要である.
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