増大号 肝疾患 臨床検査でどう迫る?
3章 慢性の肝疾患
肝腎症候群における臨床検査の役割
古殿 孝高
1
,
渋谷 祐子
1
1NTT東日本関東病院高血圧・腎臓内科
キーワード:
肝腎症候群
,
HRS
,
急性腎障害
,
AKI
,
腹水
,
トルバプタン
,
アルブミン
Keyword:
肝腎症候群
,
HRS
,
急性腎障害
,
AKI
,
腹水
,
トルバプタン
,
アルブミン
pp.1147-1151
発行日 2023年10月15日
Published Date 2023/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542203429
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肝腎症候群(HRS)
肝腎症候群(hepatorenal syndrome:HRS)は肝硬変で肝不全が不可逆的に進行した時期に発症する機能的腎不全である.肝硬変患者では腎機能が重要な予後予測因子で,HRSで急性腎障害(acute kidney injury:AKI)が出現すると肝疾患の予後が悪くなることが報告されており1),肝硬変に対する長期管理において腎機能を悪化させないようコントロールすることが重要である.
HRSの病態は腎皮質血管攣縮による腎血流障害で起こる糸球体濾過量の低下である.この発症機序を図12)に示す.肝硬変でまず門脈圧亢進が生じ,一酸化窒素やその他の血管拡張物質の産生が亢進する.これにより末梢血管抵抗減弱・有効循環血液量低下が生じ,その結果,腎血流・還流圧が低下すると,レニン-アンギオテンシン-アルドステロン(renin-angiotensin-aldosterone:RAA)系,交感神経活性の亢進,ADHの上昇による腎血管収縮が起こり,腎血流障害が生じる.さらに,低アルブミン血症による循環血液量低下,生体への細菌叢の移動で引き起こされる活性酸素種やサイトカインの増加がHRSの成因と考えられている2).肝硬変である時期までは血管収縮作用と腎血流保持のバランスがとれ,糸球体濾過が保持されるが,血管収縮の影響が現れると腎血流が著明に減少し糸球体濾過圧が低下することで腎障害が生じると考えられており,感染やエンドトキシン血症が出現するとさらに腎障害が増悪する2).
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