特集 膵神経内分泌腫瘍update
3 . 膵神経内分泌腫瘍のがん遺伝子研究―PHLDA3 は膵神経内分泌腫瘍の運命を決定する
冨永 航平
1,2
,
陳 妤
1,3
,
大木 理恵子
1
1国立がん研究センター研究所基礎腫瘍学ユニット
2東邦大学大学院理学研究科生物分子科学専攻
3早稲田大学大学院先進理工学研究科生命医科学専攻
キーワード:
p53
,
PHLDA3
,
エベロリムス
,
Akt
,
LOH
Keyword:
p53
,
PHLDA3
,
エベロリムス
,
Akt
,
LOH
pp.1099-1109
発行日 2018年7月20日
Published Date 2018/7/20
DOI https://doi.org/10.19020/CG.0000000465
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膵神経内分泌腫瘍(PNETs)においてPI3K—Akt—mTOR経路が異常に活性化していることが知られている.われわれが見出したPNETsの新規がん抑制遺伝子PHLDA3は,PNETs検体においてLOH(loss of heterozygosity)とメチル化の2—hitによって機能が失われており,さらにはPHLDA3の機能喪失とPNETsの予後不良との関連が示唆された.PHLDA3はがん遺伝子Aktの活性化を特異的に抑制することでPI3K—Akt—mTOR経路を負に制御し,PNETsの発生・悪性化抑制に寄与する.PNETsの治療薬としてmTOR阻害薬であるエベロリムスやアポトーシス誘導剤であるストレプトゾトシンの使用が認可されているが,治療効果のある患者を選別することは未だにできていない.われわれは,PI3K—Akt—mTOR経路を負に制御するPHLDA3遺伝子の機能の有無が,エベロリムスをはじめとしたPNETsの治療に用いられる分子標的薬の奏効性を判断する指標となる可能性があると考え研究を進めている.
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