HIF-PH阻害薬への期待と懸念
HIF-PH阻害薬使用時の高血圧・血栓症に対する反応
福内 史子
1
1葉山ハートセンター腎臓内科
キーワード:
HIF-PH阻害薬
,
高血圧
,
血栓症
,
一酸化窒素(NO)
Keyword:
HIF-PH阻害薬
,
高血圧
,
血栓症
,
一酸化窒素(NO)
pp.94-97
発行日 2023年1月10日
Published Date 2023/1/10
DOI https://doi.org/10.19020/CD.0000002437
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心腎連関が提唱され治療も進歩しているが,透析患者の心不全,心筋梗塞,脳血管障害を合わせた心血管死は32%にも及ぶ.腎性貧血は,腎臓でのエリスロポエチン(EPO)産生が低下することにより引き起こされる.1990年,赤血球造血因子刺激製剤(erythropoiesis stimulating agent;ESA)により,透析患者の貧血は飛躍的に改善した.しかし,ESA治療に伴う副作用,とくに心血管イベントの増加が課題となった.ESAの高血圧,血小板数増多,血液粘稠度上昇による血栓塞栓症などの副作用は,達成したヘモグロビン濃度よりもESA投与量と相関していた.本来の生理的なEPO濃度を超えての投与に関連している.低酸素誘導型転写因子(hypoxia-inducible factor;HIF)-プロリン水酸化酵素(prolyl hydroxylase;PH)阻害薬は,内因性にEPOを増加させる.より生理的となり,ESAの副作用を抑制し心臓血管イベントの改善が期待された.しかし,現在までの報告データでは改善には至らず,血栓症は,ESAと比較し増加しているとの報告もある.ロキサデュスタット(エベレンゾ®),バダデュスタット(バフセオ®),ダプロデュスタット(ダーブロック®)の三種のHIF-PH阻害薬の透析患者における第三相臨床試験データでは,ESAと比較して,心血管イベントは非劣性である.製剤による特徴もあり,今後の報告が待たれる.
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