特集 透析の開始・継続・見合わせ
2.「透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言」の意義―倫理的視点からの検討
会田 薫子
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1東京大学大学院人文社会系研究科死生学・応用倫理センター上廣講座
キーワード:
医療倫理
,
臨床倫理
,
原則
,
保存的腎臓療法
Keyword:
医療倫理
,
臨床倫理
,
原則
,
保存的腎臓療法
pp.319-324
発行日 2021年4月10日
Published Date 2021/4/10
DOI https://doi.org/10.19020/CD.0000001674
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医療倫理と臨床倫理の視点から2020年版「透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言」を分析すると,2014年版における患者の「自己決定」に代わり「共同意思決定」の推奨が打ち出されており,臨床倫理的に重要な前進であるといえる.また,医学的な研究知見の進展を踏まえ,2014年版には記載がなかった保存的腎臓療法(conservative kidney management;CKM)に紙幅を割いていることが意義深い.これによって,透析療法を中心とする腎代替療法ではない選択肢が示されたことは,腎不全患者の超高齢化が進展するなか,「与益」原則と「無危害」原則に沿った「提言」の刷新といえる.しかし,CKMの情報提供は腎代替療法と並列とはされていない.CKMを選択し透析療法を見合わせた後のケアとその実践については,日本と欧米諸国との社会的・文化的な相違も考慮し,今後作りあげる必要があるとされており,「社会的適切さ」原則に沿った課題として認識されている.
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