シリーズ ポストコロナ社会を考える—変わるもの,変わらないもの
自然と人間
養老 孟司
Takeshi Yoro
pp.566-567
発行日 2021年6月15日
Published Date 2021/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202536
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コロナ関連の言説は,ただいま世にあふれていると言ってもいい.83歳の老人がそこになにか付け加えることがあるかというと,もちろんなにもない.日本社会の未来像とか,世界の潮流とか,大きな話題には事欠かないが,きわめて大雑把に言うなら,現代の問題はどこまで行っても自然と人間社会の関係に尽きる.コロナもそうだし,人為的であれ自然現象であれ,気候変動もそうである.いわゆる災害,地震,台風,津波も当然ながらそこに含まれる.原発は言うまでもない.高度文明社会などというけれど,人と自然との接点が問題になるのは,古代以前ともまったく変わらないであろう.個人にできることは,自然と自分の関係を個人的に体験し,身をもって知っておくことだけだろうと思う.それがないと,いくら考えても,話が宙に浮く.
コロナで変わることも,変わらないこともあろう.大きく変わったのは,対人接触の頻度である.変わらないのは,当たり前だが,対物の作業である.
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