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公益社団法人日本麻酔科学会第70回学術集会講演特集号 学術委員会:学会賞記念講演
ヒト屈曲反射ワインドアップ観察の低侵襲手法
A minimally invasive method for observing wind-up of flexion reflex in humans
谷口 智哉
1
,
西脇 公俊
1
,
乾 幸二
2,3
Tomoya TANIGUCHI
1
,
Kimitoshi NISHIWAKI
1
,
Koji INUI
2,3
1名古屋大学大学院医学系研究科麻酔・蘇生医学
2愛知県医療療育総合センター発達障害研究所
3自然科学研究機構生理学研究所
キーワード:
屈曲反射
,
時間的加重
,
中枢性感作
,
ワインドアップ
Keyword:
屈曲反射
,
時間的加重
,
中枢性感作
,
ワインドアップ
pp.S147-S152
発行日 2023年11月20日
Published Date 2023/11/20
DOI https://doi.org/10.18916/masui.2023130022
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1 背 景
同じ強度の侵害刺激を反復して与えると,刺激ごとに徐々に痛み感覚が増大する “痛みの時間的加重(temporal summation of pain)” が引き起こされる。この現象は脊髄後角細胞の発火が侵害刺激の反復により増加するワインドアップ(wind-up)により生じる1)2)。ワインドアップ現象は脊髄シナプスの短期可塑的変化であるが,中枢性感作(central sensitization)の誘因となる可能性が示されており3),ワインドアップ現象を観察し測定することは慢性痛や痛覚過敏などの病的な痛みの解明や診断に有用であると考えられる。
動物実験においては,ワインドアップ現象は末梢神経C線維に反復する刺激を与えて,脊髄後角細胞の活動電位の発火増大を直接記録する方法や1),刺激により生じる屈曲反射増大を筋電図で測定する方法が用いられる4)。ヒトにおける屈曲反射も痛みの代替指標として安定して測定できることが知られており5)6),電気刺激や熱刺激による下肢屈曲反射の痛み成分(RⅢ成分)を測定し,反復刺激による増大を指標にワインドアップを観察する方法が試みられている7)~10)。しかし,測定に強い痛みを伴うため普及しておらず,より痛みの少ない測定方法が必要である。
本研究は,屈曲反射のワインドアップを観察するための侵襲の少ない測定方法の確立を目的とし刺激方法の検討を行った。一般的な双極電極を用いた電気刺激に加えて,磁気による神経刺激,および単電極を用いた電気刺激の3種類の刺激を用いて反復刺激による屈曲反射を誘発し,ワインドアップの効果と痛みの増大を比較検討した。
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