増刊号 それぞれの創傷治癒
Ⅱ.頭部・顔面・頸部 8.顎矯正手術の創傷治癒
奥本 隆行
1
1藤田医科大学病院形成外科
pp.S117-S120
発行日 2024年6月30日
Published Date 2024/6/30
DOI https://doi.org/10.18916/keisei.2024130028
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はじめに
顎矯正手術ではそもそも創傷治癒に関して意識すること自体あまりなかったというのが正直なところである。他部位の手術に比べて感染を来たすことは少なく,四肢骨のように骨の癒合不全を来たすような経験もほとんどないといっても過言ではない。しかし改めて考えると,顔面骨骨折の整復術とは少し異なる過程であることにも気付かされた。すなわち骨折では可及的に元の位置に整復するが,顎矯正手術では骨切り後に移動することで骨片間に何らかのギャップが生じる。できる限り良好な骨接合を得るためにさまざまな骨切り方法が報告され,実際の手術においても骨片間の干渉をできる限り削合するような処置が必要である。また通常口腔内操作のみで行われるが,口腔内は病原性を有する菌が常在する汚染領域であるにもかかわらず,創の感染や治癒障害はまれである。しかし骨片間のギャップ,スペースが生じることで血腫や浸出液の貯留なども生じやすく,感染リスクに対するマネージメントは考慮しておく必要がある。本稿では顎矯正手術における創傷治癒に関してその特徴を解説するとともに,注意すべき対処法に関して述べたい。
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