増刊号 それぞれの創傷治癒
Ⅱ.頭部・顔面・頸部 6.顎裂の創傷治癒
杉本 孝之
1
,
杉本 佳香
1
,
石渡 靖夫
1,2
1北里大学医学部形成外科美容外科学
2いしわた矯正歯科
pp.S106-S110
発行日 2024年6月30日
Published Date 2024/6/30
DOI https://doi.org/10.18916/keisei.2024130026
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はじめに
顎裂を伴う唇顎口蓋裂に顎裂部骨移植術を行うことは至適治療かつ歯科矯正治療の一環として必須の治療である。顎裂部骨移植の成否は,顎裂により分離しているメジャーセグメントとマイナーセグメントが生着した移植骨により一体化すること,移植部位へ歯の萌出誘導や歯の移動により長期的に安定した咬合が保持されることの2つの要素により判定される。創傷治癒の観点からは,短期的には移植骨が生着して炎症の認められない状態ができれば成功と評価できるが,長期的には移植部に歯のない状態が継続すると骨が廃用性萎縮により減少し上顎歯列の一体性が減弱し咬合の不安定をもたらすことから,完全な創傷治癒が起こったとはいい難い。そのため顎裂部骨移植においては手術手技だけでなく,その後の歯の萌出や移動を歯科医と共同計画のもと長期的視点に立ち計画することが重要である。
一方,顎裂部に移植した骨がどのように周囲骨と一体化するのか,またどのようなメカニズムで歯の萌出誘導が可能となるかはいまだ明確にはなっていない。
本稿では現在報告されている顎裂部骨移植の移植材料ごとの特徴や長期経過と顎裂部骨移植領域における構造の特色を創傷治癒の観点から述べる。続いてわれわれの施設で行っている顎裂部二次骨移植術に関して症例を通して紹介する。最後に未来の展望と研究の方向性などの概略を述べていく。
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