特集 CQ&図解で学ぶ 生殖医療の基礎講座
Ⅶ 着床前遺伝学的検査(PGT)
CQ 35 PGTの適応は? 何がわかるのか?
瀧内 剛
1
1大阪大学大学院医学研究科先端ゲノム医療学共同研究講座/産科学婦人科学講座
pp.1409-1417
発行日 2025年11月30日
Published Date 2025/11/30
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000003645
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
A
▶着床前遺伝学的検査(PGT)の適応は無制限ではなく,適応を適切に絞ることで臨床的有用性が高まる。わが国における適応は,a)反復する胚移植不成功の既往または反復する流死産の既往(PGT-A),b)染色体構造異常保因者(PGT-SR),c)重篤な遺伝性疾患児が出生する可能性のある遺伝子変異または染色体異常の保因者(PGT-M)に限定されている。
▶現時点(2025年8月22日)ではわが国では適応に含まれていないが,「高齢」をPGT-Aの適応とする報告も多い。
▶PGT-A/SRでは,染色体の数的異常や大きな部分欠失・重複(モザイク含む)の推定が可能であり,PGT-Mでは既知の病的遺伝子変異の有無が判別できる。一方,PGTには,偽陽性・偽陰性,モザイク判定のばらつき,ADOなどの検査上の限界が内包されていることを前提に,結果を解釈・説明する必要がある。
▶臨床的意義としては,胚移植あたりの妊娠率上昇・流産率低下・単一胚移植率の増加が期待できる。しかし,採卵あたりの累積出生率改善効果については,特に若年の予後良好群では疑問視されており,検査に伴う費用・時間・移植の機会喪失のリスクを踏まえて,実施対象を慎重に検討する。

Copyright © 2025, KANEHARA SHUPPAN Co.LTD. All rights reserved.

