特集 エビデンスと経験が紡ぐ未来の産科診療―科学的探究がもたらす新たな視点
2.母体循環評価に基づく妊娠高血圧腎症のニトログリセリンによる治療
馬詰 武
1
T. Umazume
1
1北海道大学病院産科・周産母子センター(副部長)
pp.343-349
発行日 2025年4月1日
Published Date 2025/4/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000003354
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
当院では妊娠高血圧腎症の治療にニトログリセリンを使用し,特に帝王切開後の利尿促進と酸素化不良の改善に寄与している。妊娠高血圧腎症の循環動態を従来の「血管内脱水」から「末梢血管抵抗の増大」に重点をおいて再評価した結果,血管平滑筋を弛緩させるニトログリセリンによる血管拡張とフロセミドの併用が有効であることが臨床的に明らかとなってきた。妊娠高血圧腎症では末梢血管の収縮によりcentral volume shiftが起こりやすく,さらに健常妊婦でも全妊娠期間を通して心負荷が最大になるのが産後3日目であることから,その時期にニトログリセリンで末梢血管拡張をさせながら積極的に利尿を促す治療が妊娠高血圧腎症患者の回復を早める。

Copyright © 2025, KANEHARA SHUPPAN Co.LTD. All rights reserved.