特集 胎盤の科学がもたらす周産期疾患の新たな理解
企画者のことば
永松 健
1
Takeshi Nagamatsu
1
1国際医療福祉大学成田病院産科婦人科(教授)
発行日 2023年11月1日
Published Date 2023/11/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000002722
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絨毛細胞は胎盤における中心的な構成細胞であるが,血管形成,免疫調整,栄養吸収・ガス交換,ホルモン産生など非常に多様な機能を発揮して妊娠を維持して胎児の発育を支える。そして,妊娠期の母体では全身的な変化が生じるが,これは胎盤が司令塔として機能することで誘導されている。胎盤の機能・構造的な異常は様々な周産期疾患と密接な関係をもっており,胎盤を知ることはまさに周産期疾患の理解を深めることにつながる。胎盤にかかわる知見の集積により,バイオマーカー,遺伝学的検査,画像検査,薬物治療など様々な分野で診療に直結した成果が生じている。そして,胎盤の形成不全や機能障害に関連して発症する疾患を包括する概念として,胎盤関連産科合併症(placenta-mediated pregnancy complication;PMPC)がある。胎児発育不全(fetal growth restriction ; FGR),Preeclampsia,常位胎盤早期剝離,後期死産などこのPMPCにかかわる疾患において基礎的研究における知見を臨床応用してゆく動きも活発である。そこで,近年の周産期疾患における診療の進歩について胎盤をキーワードとして見つめ直すことを目指して各方面でご活躍の皆様にご寄稿いただいた。本企画の内容が,日頃見慣れた胎盤に対する新たな視点を提供して読者の皆様の診療に寄与することを期待したい。
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