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凝固とは「血栓をつくること」であり,線溶とは「血栓を溶かして分解すること」である.すなわち,凝固により生じた不溶性の安定化フィブリンを可溶性のフィブリン分解産物に分解する反応が線溶であり,血管あるいは組織障害時に形成された血栓を修復終了後に溶解・除去する機構である.その主役はプラスミンであるが,プラスミノゲンがプラスミノゲンアクチベータにより限定分解され活性型のプラスミンになる.線溶活性化に伴い血液中でプラスミンが生成・活性化されると,線溶の暴走を防ぐためにセリン蛋白分解酵素であるα2プラスミンインヒビター(α2-plasmin inhibitor:α2-PI)と速やかに結合しプラスミン・α2-PI複合体(plasmin-α2 plasmin inhibitor complex:PIC)を形成しプラスミン活性を阻害する1).また組織型プラスミノゲンアクチベータ(tissue plasminogen activator:t-PA)は血管内皮細胞から産生されるプラスミノゲンアクチベータインヒビター-1(plasminogen activator inhibitor-1 PAI-1)で不活化される2).すなわち,通常は不要になった血栓を効率よく溶解する働きを求められるが,何らかの病的誘因により過剰な溶解反応(線溶亢進)が生じれば出血症状が起こり,溶解反応不全(線溶抑制)が生じれば血栓症が起こる.プラスミンの血中半減期は非常に短く測定は困難であるが,臨床現場ではPICで線溶状態を評価できる1).また,フィブリノゲン・安定化フィブリン分解産物(fibrin/fibrinogen degradation products:FDP)やDダイマーなども線溶マーカーとして用いられる.FDPは安定化フィブリン+フィブリノゲンの分解産物で一次線溶のマーカーとなり,一方でDダイマーは安定化フィブリンのみの分解産物で二次線溶のマーカーとなる3)(図,表1).
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