特集 見直そう・教えよう 子どもの身体診察スキル
企画のことば
伊原 崇晃
1
1兵庫県立尼崎総合医療センター小児科
pp.1078-1079
発行日 2023年11月1日
Published Date 2023/11/1
DOI https://doi.org/10.18888/sh.0000002744
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
心窩部を深く圧迫すると患者が軽い痛みを訴える――あまりに多く遭遇するその場面で,カルテには何と記載しているだろうか.「有意な圧痛はない」と記載しているだろうか,それとも「心窩部に軽度の圧痛あり」としているだろうか.いずれにしろ,その後には「有意な圧痛とは何か」もしくは「軽度の圧痛が何を示唆しているのか」という疑問が続かなくてはならないはずである.その疑問をもとに成書を紐解くと,正常な大動脈は深く触診した際に筋緊張や反跳痛を伴わない鈍い不快感として圧痛が生じることがある(同様の圧痛は腫大した肝臓,正常の盲腸,正常または攣縮したS状結腸でも生じる)ことを知る1).こうした過程を経験したことがないのであれば,普段行っている評価は漠然とした,解像度の低いものかもしれない.さらに,このような疑問を抱かないことは,腎臓の触診で軽い痛みを生じる患者に対しても,先ほど同様に「有意な圧痛ではない」と誤って結論づける可能性を孕んでいる.
Copyright © 2023, KANEHARA SHUPPAN Co.LTD. All rights reserved.