特発性正常圧水頭症

Idiopathic normal pressure hydrocephalus

要旨：特発性正常圧水頭症（iNPH）は，くも膜下出血などの明らかな原因がないにもかかわらず，脳脊髄液動態の異常（脳脊髄液の拍動性の亢進，排泄遅延）をきたし生じる疾患である。本邦における有病率は0.2～3.7％で，基本的には60歳以上で発症する。iNPHの発症に関連する因子は，高血圧，糖尿病，緑内障，睡眠時無呼吸症候群，遺伝学的背景がある。歩行障害，認知機能障害，排尿障害が慢性に進行する場合に本症を疑い，『特発性正常圧水頭症診療ガイドライン第3版』に記載された診断基準を参考に，各種画像検査，脳脊髄液検査，タップテストを行い診断する。治療はシャント術が行われ，その短期的，長期的な有効性はおおむね確立している。歩行障害，認知機能障害，排尿障害の3徴のいずれかを呈し，iNPHとして矛盾のない特徴を有している場合は脳神経内科，あるいは脳神経外科へコンサルトする。