（8）歯周靱帯とメカニカルストレス

Periodontal ligament and mechanical stress

歯周靱帯（periodontal ligament；PDL）は，歯根を覆うセメント質と歯槽骨の皮質骨表面とを物理的に結合する多機能性線維組織であり，歯の支持，感覚の受容，血管網による栄養の供給および歯周組織の維持・再生に役割を果たしている。歯は様々な機械力に曝されており，PDLは，咀嚼，嚥下，発語および矯正的歯の移動などの多方向からの機械力を感知するmechano-responsiveな組織である。PDLには間葉系幹細胞が存在し，伸展力や圧縮力のようなメカニカルストレスに応答して，歯根膜線維芽細胞または骨芽細胞のいずれかの細胞への分化が振り分けられる。すなわち，PDLには恒常性維持のためのメカニズムが存在すると考えられる。しかし，どのようにしてメカニカルストレスを生物学的メディエーターに伝達するのか，線維形成と骨形成のバランスを調節するのか，それらの分子メカニズムは十分明らかでない。