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1983年に私が整形外科を志した頃,セラミックは骨に代わる夢の材料として期待されていた。入局と同時に原田征行先生(故人,当時弘前大学助教授,のちに教授)にいただいたテーマは「セラミック製頚椎人工椎間板の作成」という壮大なテーマであった。生体セラミックとバイオメカニクスの勉強をして20kg程度のイヌのサイズで人工椎間板を設計し業者に作成してもらい数十匹に手術を行った。椎間可動域を保つスペーサーとしては成功したが,硬くてbioinertなアルミナの荷重部位への適用は椎体へのsinkingと人工椎間板そのものの脱転が起こり,とても臨床応用できる代物ではなかった。実験が終了する頃はアルミナに代わりハイドロキシアパタイト(HA)などbioactiveなセラミックが主流になり,臨床では頚椎脊柱管拡大術が全盛であった。イヌの頚椎前方手術はできるが,ヒトの頚椎後方手術は助手として数例の経験しかなかった私が,頚椎脊柱管拡大術(黒川法)の第一助手として腸骨稜から棘突起間に移植する5椎弓分の採骨を命ぜられた。必要な採骨量は多く,展開も下手くそで採骨部の出血は200gにも及び,頚部からわずか20gしか出血させていないオーベン(中野恵介先生,牧整形外科病院)にひどく叱られた。「こういう非荷重部位で隙間を埋めるところにこそ人工骨を使えばいいのですが…」,と言い訳がましく言うと「どういうことだ?」,と私の言い訳を聞いてくださった。人工材料の性質と,HAと骨が直接結合しているデータを見せ,棘突起間のスペーサーとして使用すれば手術時間の短縮,出血量の軽減,採骨部疼痛がなく術後リハビリテーションが円滑に行える可能性があることなどについて説明した。
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