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結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa:PAN)は中型または小型筋型動脈の血管壁に炎症を起こす壊死性血管炎で,細小動静脈,毛細血管の血管炎および糸球体腎炎を伴わず,抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)は陰性と定義されている1)。1866年にKussmaulとMaierが壊死性血管炎の剖検例を結節性動脈周囲炎と報告したが,その後に炎症は動脈周囲だけでなく血管の全層にみられたことからPANと呼ばれるようになった。さらに,罹患血管のサイズで細・小血管にPAN様の壊死性血管炎を起こす顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis:MPA),壊死性血管炎に肉芽腫形成を伴う多発血管炎性肉芽腫症(granuloma with polyangiitis:GPA)と好酸球性肉芽腫性多発血管炎(eosinophilic granuloma with polyangiitis:EGPA)がPANから分離独立した。これら3つの小型血管炎は血清中にANCAを検出することからANCA関連血管炎と総称されている。PANでは中型の筋型動脈が障害されることが多く,小型の筋型動脈とその支配臓器である腎,消化管や皮膚,神経,関節,筋肉が障害されることもあるが,肺動脈は通常障害されない。炎症を起こした血管壁の肥厚と内膜の増殖から血管内腔の狭窄をきたし,罹患血管の血流が減少すると血栓を形成しやすくなる。また組織の虚血や梗塞によって様々な臨床症状を呈する。動脈の狭窄や血栓形成に加えて,炎症で血管壁が脆弱になると動脈瘤を形成する。さらに動脈瘤破裂による出血で致死的になる恐れがある。
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