下腿皮膚動脈炎から手指壊疽を伴う結節性多発動脈炎へ移行したと考えられた1例

A possible case of polyarteritis nodosa with gangrene in the fingers possibly progressing from cutaneous arteritis of lower legs

要約　79歳，女性．61歳時より両下腿に潰瘍が出現し，皮膚病理組織検査では皮下小動脈に動脈炎を認め皮膚動脈炎（cutaneous arteritis : CA）と診断した．中等量ステロイド等の内服で加療したが，細菌感染を併発し両下腿離断術を施行した．72歳時にCRPの上昇と右手指の疼痛，冷感が出現した．全身症状がなく，CT血管造影にて右橈骨・尺骨動脈の閉塞を認め，CAから移行した結節性多発動脈炎（polyarteritis nodosa : PAN）と診断した．ステロイド増量とシクロフォスファミドの併用により手指末端の黒色壊疽の進行はなくその後5年間再発はない．PANでは，内臓病変を伴わない場合でも四肢に壊疽が出現した際は拡大を防ぐため早急にステロイド全身投与に免疫抑制薬を併用し，壊疽を最小限に留めることが重要と考えられた．