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原発乳癌における術前化学療法のメリットは,「①腫瘍の縮小またはダウンステージング」「②乳房温存率の上昇」「③治療効果の評価」である。しかし,化学療法は乳癌のサブタイプにより治療効果および予後が異なることが明らかになっている。術前化学療法は,ER(estrogen receptor)陽性HER2(human epidermal growth factor receptor 2)陰性乳癌では病理学的完全消失(pathologic complete response;pCR)率も10%未満と低く,予後に影響しないと報告されている一方,トリプルネガティブ乳癌においては22~38.9%に,HER2陽性乳癌においては43~65.2%にpCRが得られる1-4)。さらに,ER陰性HER2陽性乳癌においては,抗HER2薬としてtrastuzumabに加えpertuzumabが使用可能になったことで63.2~83.8%にまでpCRが上昇する5,6)。これらのサブタイプにおいては,pCRは独立した予後予測因子となる1-4)。pCRを得られたことが確実に診断できれば,縮小手術だけでなく,非切除となり得る可能性があり,現時点でも高いpCR率から恩恵を受ける患者数は大きい。しかし,現時点では手術省略可能なエビデンスは確立していない。画像検査で臨床的完全消失(clinical complete response;cCR)と診断されたとしても確実にpCRを予測することができないため,外科的切除を行い残存腫瘍の有無を確認せざるを得ないのが現状である。現在,術前化学療法が著効した症例に対し,非手術を目指した研究が世界中で進んでいる。しかし,非切除を標準治療の選択肢にするためには,「①cCRの確実な診断」と「②標準治療と比較した予後の担保」が必須である。また,術前化学療法後の非手術は予後的意義,局所制御,整容性の観点から,乳房手術と腋窩手術を別々に考える必要がある。
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