特集 括約筋間直腸切除術(ISR)の手術手技
taTMEを併用した腹腔鏡下ISR
長谷川 寛
1
,
塚田 祐一郎
1
,
佐々木 剛志
1
,
西澤 祐史
1
,
池田 公治
1
,
伊藤 雅昭
1
1国立がん研究センター東病院大腸外科
キーワード:
直腸癌
,
括約筋間直腸切除術
,
taTME
Keyword:
直腸癌
,
括約筋間直腸切除術
,
taTME
pp.1849-1860
発行日 2018年12月15日
Published Date 2018/12/15
DOI https://doi.org/10.18888/op.0000000967
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近年,直腸癌に対する外科的治療は大きな変革を遂げている。腫瘍学的には,1982年にHealdら1)がtotal mesorectal excision(TME)を提唱し,1986年にQuirkeら2)がcircumferential resection margin(CRM)の重要性を報告した。TMEの完遂およびCRMの確保は局所制御率の向上に大きく貢献した。術式においては,肛門管近傍の腫瘍に対する手術は従来,永久人工肛門を余儀なくされるMiles手術が主流であったが,1990年代には肛門温存手術の新たな選択肢として,intersphincteric resection(ISR)が登場した3)。その後,腹腔鏡手術が普及し,拡大視効果によって微細解剖を認識できるようになり,より繊細で正確な手術が可能となった。しかしながら,腹腔鏡手術の位置付けは確固たるものとはいえないのが現状である。現在までに直腸癌に対する開腹手術と腹腔鏡手術のランダム化比較試験の結果がいくつか報告されている。COLOR Ⅱ試験4)とCOREAN試験5)では,組織学的CRM陰性率は開腹手術群と腹腔鏡手術群で同等の結果であり,腹腔鏡手術群の3年局所再発率および3年無病生存率における非劣性が証明された。一方で,ACOSOG Z6051試験6)とALaCaRT試験7)は腫瘍学的短期成績のみの報告ではあるが,腹腔鏡手術群で組織学的CRM陰性率が劣っており,その理由として開腹手術と同様に骨盤内の深く狭い空間では手術操作が制限され,微細解剖を理解した手術の完遂が困難であることが一因として考えられている。
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