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Ach やDenk らによるイヌやcadaver を用いた実験を経て,1933 年4 月28 日,George GrayTurner は世界初の食道切除術である非開胸食道切除術(transhiatal esophagectomy;THE)を成功させた1)。1960 年代には胸部食道癌に対して本術式が行われてきた1)。開胸せずに食道を切除するこの術式を確立した手技として完成させたのはわが国のAkiyama ら2)であり,1971 年からこの方法を試み,1975 年には25 例の患者に用指的剝離や,先端にring を付けた鉗子やvein stripperを用いた反転抜去術を発表している。米国ではOrringer が22 例の胸部食道癌と4 例の良性疾患に対してTHE を行い,1978 年の米国胸部外科学会において発表しているが, 手術死亡19 %(5 / 26),平均出血量も多く,とても低侵襲とはいい難い成績であった。しかし,開胸を要しない本術式はもう1 つの食道切除術として確立され,2000 年の米国外科学会における報告でも全米の食道切除の26%にTHE が適応され,米国ではTHE は標準治療と認識されている3,4)。Hulscherらによる開胸手術との比較メタ解析でも出血量は多いものの術後の循環・呼吸器合併症は少なかったとされており5),開胸手術と比較したランダム化比較試験では,生存率の差はなく,呼吸器合併症や乳び胸などの術後合併症は開胸手術で有意に多く,術後,人工呼吸を要した日数,ICU 入室期間と在院日数は開胸で延長していた6)。しかし,わが国における食道癌術後生存率は欧米に比較して明らかに良好であり,胸部食道癌に対しては頸,胸,腹部の3 領域リンパ節郭清を伴う右開胸食道切除により,術後生存率は向上してきた。
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