巻頭言
Overtherapyの戒め
筒井 清広
1
Kiyohiro TSUTSUI
1
1石川県立中央病院皮膚科,部長
pp.277-278
発行日 2024年3月1日
Published Date 2024/3/1
DOI https://doi.org/10.18888/hi.0000004447
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1997年に金沢大学医学部附属病院から石川県立中央病院に赴任して25年となります。高度急性期医療を担いがん拠点病院である地域基幹病院を二人体制で踏ん張ってきましたが,医局から毎年派遣していただいた優秀な若手医師は20名となります。数年前の還暦祝いでは,「診断を付けろ」が私の口癖だったとの思い出話で盛り上がりました。恩師である広根孝衛名誉教授に常々教えられたのは,皮膚症状を詳細に観察し診断時には必ず複数の鑑別診断をあげ,皮膚生検による病理組織での確認を怠らないことで,臨床現場では一時的な診断を付けて治療を開始することもありますが,何度も立ち止まり診断に齟齬がないかを確認するようにしてきました。正しい診断を導ければ,先人の積み上げてきた豊富な治療経験があり,自ずと正しい治療を選択できるとの思いから,若手医師には自分の実力不足による診断(overdiagnosis)はやむを得ないとしても,誤った診断による不適切な過度な治療(overtherapy)は患者さんに対して決して許されるものではないと戒めてきました。
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