視座
楽観バイアスの戒め
川口 善治
1
Yoshiharu KAWAGUCHI
1
1富山大学医学部整形外科
pp.1317
発行日 2021年11月25日
Published Date 2021/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408202173
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1年延期された東京オリンピックが2021年7月23日に開幕し,さまざまな競技で熱戦が繰り広げられている.日本人選手の活躍に日本中の人々が熱狂している姿が,毎日報道されており,私も毎日興奮しながらテレビ観戦をしている.しかし,7月29日には日本における1日の新型コロナウイルス感染患者数が1万人を超え,過去最大となっているという現状がある.刻々と情勢が変化する中にあって,まさに原稿を書いている今(2021年7月末)はコロナ感染の最大の危機を迎えているように思われる.
東京をはじめ各地で緊急事態宣言が出されている一方で,オリンピック開催によるお祭りムードが醸成され,世界から多くの人が来日しても自分は大丈夫だと思う心理が,多くの人に働いているのではないだろうか? このように自分にとってありがたく聞き入れやすい情報は受け入れ,逆に耳障りな情報をスルーしてしまうことを「楽観バイアス」という.「楽観バイアス」は人間の心理としてはごく自然なことで,日々の生活のストレスから逃れるための無意識の行為であると考えられている.しかしここに大きな落とし穴があることは,冷静に考えれば誰もが理解できることである.
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