憧鉄雑感
第132回 足りない軟膏
安部 正敏
1
Masatoshi ABE
1
1医療法人社団 廣仁会 札幌皮膚科クリニック
pp.419-419
発行日 2023年3月1日
Published Date 2023/3/1
DOI https://doi.org/10.18888/hi.0000003835
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近くの保険薬局から疑義照会が来る。診療中も北海道新幹線札幌駅線路改良工事などを夢想する注意散漫な筆者であるので,斯様な場面は珍しくない。高校時代何度も試験でケアレスミスを連発し,教師に “斯様な些細なる誤りに部分点を与えぬとは,教育ではなくもはや洗脳” などと訳の分からぬ主張をしていたが無論相手にされなかった。「患者さんが軟膏4本欲しいと伝えたのに2本しか出ていないようです。」おかしい。絶対おかしい。流石にこのやり取りは記憶にある。カルテを見返すと果たしてしっかり20グラム処方している。我が国のステロイド軟膏の多くは5グラム包装であり,いくらケアレスミスが多くとも20÷4を間違えるほどお目出たくはない。「この方はジェネリック医薬品を希望されていますから2本ですね。」薬剤師の涼しい声。それは1本10グラムだそうで何とも紛らわしい。何とかならぬものか? いや軟膏を倍量包装にするのが問題ではなく,ジェネリック医薬品企業の情報提供体制である。コストカットであろうが先発医薬品企業は,規格が変わる場合など丁寧な情報提供を欠かさず,それが医薬品を生業とする商売の基本であろう。ジェネリック医薬品企業はテレビCMで「すべては患者さんのために」など謳い,所詮 “医師のため” ではないのである。
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