憧鉄雑感
第120回 外用療法の適応
安部 正敏
1
Masatoshi ABE
1
1医療法人社団 廣仁会 札幌皮膚科クリニック
pp.443-443
発行日 2022年3月1日
Published Date 2022/3/1
DOI https://doi.org/10.18888/hi.0000003169
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“先生! 何とか軟膏で治療してくれませんか?” “無理です。基底細胞癌です” “でも先生! 去年先生は皮膚癌を軟膏で治してくれたでしょう?” “去年は光線角化症という違うものです。そちらは軟膏が適応となりますが,今回ばかりは……” 皮膚科診療では案外ありふれた光景であるのかもしれぬ。多くの患者は手術を嫌がり,治療に納得しない場合も多い。 “なら先生! もう私も80歳だ。この癌棺桶までもっていくよ!” しかし,斯様な患者こそ長生きするものであり,数年後巨大な潰瘍を作って現れるものである。事実この御大,聞くと訳の分からぬスッポンエキスだのニンニクだの毎日摂取しており,長生きする気満々である。そこで折衷案を出した。皮膚生検を行い病理組織学的に診断をして治療方針を決めましょうと。患者は納得しやれやれである。服用している薬がないこと,局所麻酔トラブルがないことを確認し,外来手術室へ移動した。もう,あとは粛々と生検術をすすめるだけである。
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