脂腺系境界悪性腫瘍から診断に至ったMuir-Torre症候群の1例

Muir-Torre syndrome diagnosed from sebaceous borderline malignant tumor

83歳，女性。初診3カ月前より前胸部に皮膚腫瘍が出現し，前医を受診した。組織学的に脂腺腺腫様の所見と悪性所見が混在し，脂腺系境界悪性腫瘍と診断した。既往歴に結腸癌があり，大腸癌（父），胃癌（弟）の家族歴から，Muir-Torre症候群を疑った。免疫染色でMSH2発現陽性，MLH1発現欠失を認め，マイクロサテライト不安定性検査でMSI-highなため，Muir-Torre症候群と診断した。Muir-Torre症候群は脂腺系腫瘍やケラトアカントーマなどの皮膚病変を主とし内臓悪性腫瘍を伴い，Lynch症候群の一亜型とされている。Muir-Torre症候群の診断において皮膚所見は重要であり，皮膚科医全般にとって知悉しておく疾患である。