憧鉄雑感
第99回 皮膚科救急の意義
安部 正敏
1
Masatoshi ABE
1
1医療法人社団廣仁会札幌皮膚科クリニック
pp.1117-1117
発行日 2020年6月1日
Published Date 2020/6/1
DOI https://doi.org/10.18888/hi.0000002061
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間も無く外来終了の時刻にその電話は入った。“転倒し顔面から出血しているが診てもらえるか?”遠からぬホテルからの電話である。職員に残業を強いるのは申し訳ないが,救急医療の一端を担うのも皮膚科診療所の役目であろう。待つこと数分,「皮膚科なんかで大丈夫か? 大怪我ですぞ〜!」などと大声がする。「こんな傷絆創膏で十分!」と矛盾甚だしい酔っ払いが現れた。看護師に縫合の準備を指示すると「皮膚科で? 外科じゃないと無理だろう〜」などと宣い「痛いのは御免だ! ホテルが勝手に電話しやがって……」客じゃなければ放っておくに違いない……と思ったら,あろうことかホテルの前でたまたま転んだ通行人であることが判明した。恩知らずのとんだ罰当たりである。とにかくベッドに横にならせると「痛いのは御免だ!」などというので「麻酔の注射がちょっと痛い位ですよ」というと「じゃあ,麻酔の麻酔をしてくれ!」など,昭和30年代のコント如きことを言う。いっそ無麻酔で……と悪魔の囁きが聞こえるが,いやしくも皮膚科専門医であり,怒りを抑え辛うじて型通りに処置を終えた。
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