憧鉄雑感
第64回 静寂なる診察室
安部 正敏
1
1医療法人社団廣仁会札幌皮膚科クリニック,褥瘡・創傷治癒研究所
pp.1331-1331
発行日 2017年7月1日
Published Date 2017/7/1
DOI https://doi.org/10.18888/hi.0000000122
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
医療機器の発達というのは目覚ましいものがあり,医療現場を一新させるまでに至る。先日訪れた歯科医院には驚いた。各診察台の上には患者用モニターが置かれ,歯の具合が瞬時に一目瞭然であるほか,合間には医療情報が流れる。尤も“怖い歯周病は3 カ月ごとの歯科検診が有用”などという,集客まがいの情報であるが,それ以上に静寂な空間である様相に驚愕する思いであった。筆者の祖父は歯科医であった。祖父宅に遊びに行くと,歯を削る恐ろしき機械のモーター音が耳について離れなかった。その後お決まりに泣き喚く患児の声。おどろおどろしい光景である。しかし,昨今の歯科外来は気になるモーター音はなく,時折泣き叫ぶ患児が静寂を破る。尤も,皮膚科診療は昔から左程煩くもなく,時に液体窒素や軟属腫摘除に泣き叫ぶ稚児の大声がこだまする。大げさなリアクションをする大人の患者も存在するが,逆にこれでもか!とばかり液体窒素をかけてもニヤニヤする尖圭コンジローマのオッサンなど不気味以外の何物でもない。ところで,先頃世間を賑わ
Copyright © 2017, KANEHARA SHUPPAN Co.LTD. All rights reserved.