連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・129
雪の森は心を静寂の世界に
柳田 邦男
pp.246-247
発行日 2017年3月10日
Published Date 2017/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686200670
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むちゃくちゃに忙しかった仕事を何とか片付けて帰宅した夜,もう仕事のことから解放されて,心静かな異次元のひとときを過ごしたいと思う時って,誰にでもあるだろう。そんな時,どうすればよいか,人によって違うだろう。ある人は静かなクラシックかポップスの音楽をBGMのように部屋に流して,ワインを傾けるとか,詩集の一部をゆっくり読むとか,またある人はミレーかモネか好きな画家の画集を開くとか。
私は,そういう時間には,よく絵本を手に取る。新作の絵本の場合もあれば,もう何度も読んできたなじみの絵本の場合もある。そういう時に選ぶ絵本は様々だが,やはり絵がしっかりと描かれているものに限られてくる。しっかり描かれているとは,必ずしも絵画的に頁の全面が塗られているという意味ではない。さし絵のように簡単であっても,その絵本の文脈に沿って象徴的にとてもよく描かれているとか,絵だけを見て頁をめくっていっても,物語の展開が伝わってくるという意味だ。
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