症例報告
炎症を伴った涙嚢憩室の1例
高木 健一
1,2
,
田邉 美香
1
,
吉川 洋
1
,
鈴木 亨
3
,
園田 康平
1
1九州大学大学院医学研究院眼科学分野
2高木眼科医院(佐賀県)
3鈴木眼科クリニック(福岡県)
キーワード:
涙道疾患
,
涙嚢部腫瘤
,
眼瞼腫脹
,
lacrimal duct disease
,
mass around lacrimal sac
,
eyelid swelling
Keyword:
涙道疾患
,
涙嚢部腫瘤
,
眼瞼腫脹
,
lacrimal duct disease
,
mass around lacrimal sac
,
eyelid swelling
pp.1205-1210
発行日 2025年10月5日
Published Date 2025/10/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000004422
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涙嚢部腫脹の鑑別として急性または慢性涙嚢炎や涙嚢腫瘍,眼窩蜂窩織炎が考えられるが,その他の疾患由来の涙嚢部腫脹の報告は少ない。今回我々は,涙嚢憩室に生じた炎症による涙嚢部腫脹の1例を経験したので報告する。患者は38歳女性,小児期から左眼に流涙症状を自覚していた。30歳時に左涙嚢部の発赤・腫脹が出現し急性涙嚢炎と診断され,涙嚢部切開排膿で加療を受け軽快したものの,同様の症状が再発を繰り返すため,九州大学病院眼科を紹介受診した。初診時,左涙嚢部と下眼瞼内側に発赤・腫脹がみられた。通水検査は正常で,MRIで涙嚢腹側にガドリニウム造影で壁が増強される5×3×6mmの嚢胞性病変を認めた。経皮的に腫瘤切除を施行したところ腫瘤は涙嚢と連続していた。切除組織はHE染色で涙嚢同様の多列円柱上皮に裏打ちされた嚢胞に多核巨細胞や泡沫状組織球,コレステリン結晶から構成された肉芽を伴っており,涙嚢憩室および憩室に生じた炎症性変化と確定診断した。術後一時的に発赤腫脹が軽快したが,術後2か月目に再発したため,涙嚢ごと残存した憩室を摘出し,涙小管鼻腔吻合術で涙道を再建した。その後3年間再発を認めていない。本症例のように通水良好な涙嚢部腫脹は涙嚢憩室の可能性を考慮する必要がある。

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