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原発性硝子体網膜リンパ腫(PVRL)症例の15年の経過を報告する。患者は44歳男性。X年に左眼の霧視と飛蚊症を自覚し当院を受診した。矯正視力は両眼1.5,両眼に軽度の硝子体混濁を認めた。炎症所見は明らかでなく,硝子体混濁が増強し,PVRLを疑い検査を行った。右眼の硝子体細胞診で悪性細胞は陰性だったが,免疫グロブリン重鎖のPCRでJH遺伝子再構成陽性,両眼の前房水インターロイキン(IL)-10高値(IL-10/IL-6>1)であった。眼外病変は認めず,PVRLと診断した。大量メトトレキサート(MTX)療法と両眼へのMTX硝子体注射を併用し,寛解を得た。X+5年に脳にびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を発症し,放射線全脳照射を含め加療され,寛解を得た。X+11年に右眼矯正視力は0.6に低下し,網膜下病巣を認め,前房水IL-10は235pg/mLと高値で,眼内病変の再発と診断した。眼外病変は認めず,大量MTX療法+MTX硝子体注射を併用し寛解を得た。その後,眼所見の悪化はなく,視力は両眼1.0を維持した。多臓器に再発があり加療を要し,白質脳症による軽度の認知機能低下はあったが,X+15年に死亡する半年前まで良好な視力を保ち,activities of daily living(ADL)は自立していた。
本症例は,発症後5年間は中枢神経系への進展を認めず,11年間は眼内病変の再発なく,発症後15年で死亡するまで良好な視力とADLを維持した。全身的な治療が生存期間の延長に寄与した可能性はあるが,多臓器再発を長期に抑えることはできなかった。眼内病変を認めるPVRLに対しては積極的にMTX硝子体注射を併用すべきと考えられた。

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