Japanese
English
連載 眼の組織・病理アトラス・95
サイトメガロウイルス網膜炎
Cytomegalovirus retinitis
猪俣 孟
1
,
向野 利彦
1
,
石本 聖一
1
Hajime Inomata
1
,
Toshihiko Kohno
1
,
Seiichi Ishimoto
1
1九州大学医学部眼科学教室
pp.1556-1557
発行日 1994年9月15日
Published Date 1994/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410903974
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
サイトメガロウイルス網膜炎cytomegalovirusretinitisは神経組織に親和性をもつヒトサイトメガロウイルスhuman cytomegalovirus (HCMV)の感染によって起こる網膜の炎症をいう。サイトメガロウイルスによって感染された細胞では,DNAその他の細胞内蛋白合成が高まり,細胞は巨大化する。さらに,核および細胞質内に封入体をもっているので,サイトメガロウイルス感染症を巨細胞封入体症cytomegalic inclusion disease(CID)ともいう。
サイトメガロウイルス感染には先天感染と後天感染がある。感染者の多くは不顕性で,無症状である。先天感染は経胎盤感染で,患児の多くは無症状であるが,稀に黄疸,肝脾腫,小頭症,網膜炎,脳石灰化などを示す。新生児は産道で感染する。成人で感染すると,サイトメガロウイルス単核症cytomegalovirus mononucleosisを起こし,発熱,肝炎,異型リンパ球増加が起こる。エイズおよび臓器移植後の免疫抑制薬や副腎皮質ステロイド薬の使用によって,生体の免疫力が低下すると,潜在性のHCMVが再活性化して日和見感染が起こる。
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.