綜説
近視進行の分子細胞生物学的メカニズム
栗原 俊英
1
1慶應義塾大学医学部眼科学教室 光生物学研究室
キーワード:
近視
,
分子細胞生物学
,
VEGF
,
小胞体ストレス
Keyword:
近視
,
分子細胞生物学
,
VEGF
,
小胞体ストレス
pp.359-365
発行日 2023年4月5日
Published Date 2023/4/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000003088
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現在東アジアを中心に世界中で近視人口が急増しており1),本邦でも2017年に行われた調査研究では,東京都内の一中学校の生徒の約94.6%が近視であった2)。1984年に奈良県で実施された研究では12歳の43.5%が近視と報告されていて3),30年間で近視有病率が2倍程度に増加したことが推定される。近視は,単なる屈折異常にとどまらず,程度にしたがって網膜剥離や黄斑症,緑内障などさまざまな眼疾患,視覚障害のリスクが増加することが報告されている4)~6)。茨城県筑西市で行われた住民調査では,40歳以上の強度近視は5.0%であった一方7),東京都内の中学校での強度近視割合は11.3%で2),今後若い世代で程度が強い近視の割合がさらに増加していくことが想定される。このようななか,屈折矯正だけでなく,近視進行そのものへの介入的治療法の確立が望まれており,近視進行の生物学的メカニズムを理解することが重要な課題となっている。本稿では,眼球を構成する各組織の相互作用に着目しながら,近年大きく発展した近視進行メカニズムの分子細胞レベルでの知見について述べる。
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