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近視性牽引性黄斑症(myopic traction maculopathy:MTM)は,強度近視に伴う黄斑部の合併症で,網膜の肥厚,網膜の瘢痕化,偽黄斑円孔形成,中心窩の網膜剥離を特徴としている1)~3)。MTMは,その自然経過中に,付着した硝子体皮質,網膜上膜,内境界膜(ILM),網膜血管,後部ぶどう腫による網膜牽引の集合体により,全層黄斑円孔(MH)および黄斑円孔網膜剥離(MHRD)に進行することがある4)~9)。したがって,手術によって網膜牽引を解除することは,MTMを解消しMHおよびMHRDとそれに伴う重度の視覚喪失とを防ぐのに効果的である。現在,MTMに対する標準的な治療法は,硝子体皮質およびILMを除去する硝子体手術(pars plana vitrectomy:PPV)で,ほとんどの症例で視力が維持・改善されている10)~20)。ILM剥離を行うことによって,黄斑の前方への牽引を軽減でき,細胞増殖の足場を除去でき,再発のリスクを低下できると報告されてきた(図1)11)12)21)。Hattoriらは,MTMに対して標準的なILM剥離が行われた79眼を含む以前のケースシリーズにおいて,術後6か月の平均視力改善は0.12 logMARであることを明らかにした15)。TaniuchiらはMTMの61眼に対して同様の研究を行い,術後12か月で0.22 logMARの視力改善を示した16)。Figueroaらは,30眼のMTM患者において,23ゲージ硝子体手術と標準的なILM剥離術の後,33.8±13か月目に0.07 logMARの視力改善を報告し17),Hwangらは33眼のMTM患者において,23ゲージまたは25ゲージ硝子体手術と標準的なILM剥離術の後,平均追跡期間19.3±12.8か月目に0.25 logMARの視力改善を報告した18)。
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