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病的近視で黄斑部付近にlacquer crack(以下LC)が発生・進行した症例の強膜やBruch(以下,ブルッフ)膜の移動について検討した。対象は病的近視で,経過観察中に黄斑部付近にLCが発生・進行した4症例,8眼(等価球面度数−11.00~−17.00D)の,5~7年経過前後の眼底写真を対象とした。眼底写真をflicker chronoscopy法で観察することで,脈絡膜・γゾーン内網膜下組織(以下,SRGZ)・αゾーンの位置変化を検出し,光干渉断層計の所見と比較した。
結果,LCが出現・増強した付近では,8眼すべてで脈絡膜が伸展しながら互いに離反しており,強膜の部分的な伸展が示唆された。同様の変化は,眼底の底面付近を活断層のように細長く広がっていた。光干渉断層計では,5眼でLC付近のブルッフ膜・網膜色素上皮層の凹凸不整と,それに伴う強膜輝度の増減がみられ,ブルッフ膜が断裂しつつある所見と思われた。乳頭耳側のブルッフ膜開口部(以下,BMO)縁付近では,5眼で局所的に脈絡膜とSRGZが互いに離反しており,強膜の部分的な伸展が示唆された。同様の変化はBMO縁と並行して活断層のように上下に伸びていた。αゾーンとSRGZの位置関係は5眼で変化し,いずれも相対的にαゾーンが耳側に,SRGZが鼻側に移動していた。LCの部位やBMO縁では強膜が局所的に伸展していた。この部位に共通するのはブルッフ膜の脆弱化,あるいは不在であり,ブルッフ膜は強膜の形状を保つうえで重要な役割を担っていることを示唆している。また,αゾーンとSRGZの間の位置ずれはブルッフ膜断端の強膜からの分離を示唆しており,γゾーンの一部には移動・瘢痕化した脈絡膜が存在していると思われた。
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