症例報告
アルコール大量摂取者にみられた栄養欠乏性視神経症の1例
月井 里香
1
,
牧野 伸二
1
1自治医科大学眼科学講座
キーワード:
栄養欠乏性視神経症
,
ビタミンB欠乏
Keyword:
栄養欠乏性視神経症
,
ビタミンB欠乏
pp.1195-1200
発行日 2021年12月5日
Published Date 2021/12/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000002370
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アルコール大量摂取者にみられた栄養欠乏性視神経症の症例を報告する。
61歳男性が緩徐に進行する両眼の視力低下と中心視野障害を主訴に受診した。20歳から飲酒歴(焼酎3~4合/日)があり,不規則な食習慣があった。受診1か月前からは,飲酒のみで,食事はほとんど摂取していなかった。視力は右(0.07),左(0.06)で,限界フリッカ値は右13Hz,左13Hzであった。Goldmann視野検査では中心5°以内で,右はI/1,左はI/4による比較暗点が認められた。頭部MRIで視神経に異常はなかった。血液生化学検査では肝機能障害があり,過度の飲酒歴,不規則な食生活を認めたことから,栄養欠乏性視神経症と診断した。後日,ビタミンB1とビタミンB12の低下が確認された。生活習慣の改善の指示と合わせて,内服治療として,ビタミンB1誘導体製剤とビタミンB12製剤を開始した。内服開始2週間後には視力は右(0.6),左(0.2)と改善した。6週間後の視力は,右(0.9),左(0.2),限界フリッカ値は右22Hz,左18Hzに改善した。3か月後の視力は,右(0.9),左(0.5)で,経過観察している。
栄養欠乏性視神経症では,適切な補充療法を早期から行うことができれば,視力予後を改善することができるが,治療開始が遅延したものでは予後が不良である。生活習慣歴や既往歴など,問診の重要性が改めて認識された症例であった。
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