REVIEW & PREVIEW
アルコール摂取と食道癌
廣橋 研志郎
1
,
大橋 真也
2
,
天沼 裕介
1
,
武藤 学
2
1京都大学大学院医学研究科消化器内科学
2京都大学大学院医学研究科腫瘍薬物治療学
pp.594-597
発行日 2015年3月10日
Published Date 2015/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402223181
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最近の動向
国際がん研究機構(International Agency for Research on Cancer:IARC)は,1988年に「アルコール飲料」を食道癌のgroup1発癌物質(ヒトに対する発癌性が認められる物質)と認定し,アルコール摂取が食道癌のリスクであることを示した1).その後,アルコール摂取は食道扁平上皮癌のリスク因子であるが,食道腺癌の因子ではないことが報告されている2).また,近年の疫学研究で1B型アルコール脱水素酵素(alcohol dehydrogenase 1B:ADH1B)や2型アルデヒド脱水素酵素(aldehyde dehydrogenase 2:ALDH2)など,アルコール代謝関連酵素の遺伝子多型が食道扁平上皮癌の発癌リスクを上げることが報告され3),アルコール代謝により生成されるアセトアルデヒドが食道扁平上皮発癌に関与する可能性が示された.こうした事実をもとに,IARCは2009年に「アルコール摂取に関連したアセトアルデヒド」も,食道癌のgroup1発癌物質と認定した.
近年,アセトアルデヒドにより生じるDNA傷害の存在が明らかとなり,食道扁平上皮癌の発癌機序に関する基礎研究も進んでいる.本稿では,アルコール摂取と食道癌,特に食道扁平上皮癌に関する疫学的な背景とともに,分子生物学的知見にも触れ,さらに食道癌の予防に関する最近の動向を概説する.
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